地元の味を堪能できる
寿司の名店「榮樂寿司」
—鹿児島・鹿屋の宝石箱

鹿児島県鹿屋市に位置する「榮樂寿司」は、地元で愛され続ける寿司店です。地元の新鮮な魚介類を使った「旬地魚の握り」や、鹿屋市の特産品「鹿屋カンパチの箱寿司」、そして錦江湾でしか獲れない希少な「幻のナミクダヒゲエビ」など、新しい食の発見が待っています。この記事では、榮樂寿司の魅力とその背景にある地産地消の取り組み、そして店主・米川さんの情熱を紹介します。

  1. 目次
  2. 旬地魚の握り 海の恵みを一口で
  3. かのやカンパチの箱寿司 伝統と革新の融合
  4. 鹿児島のうんまか深海魚
  5. 大学教授や地元漁師と連携した地産地消の取り組み
  6. 大隅地魚のお寿司と幻のエビを食べに行こう

旬地魚の握り
海の恵みを一口で

榮樂寿司の「旬地魚の握り」は、地元の市場で仕入れる新鮮な魚を使用しています。鹿屋市をはじめ、大隅半島周辺で獲れた魚(いわゆる「大隅半島前」)が、店主の熟練した技によって一貫一貫丁寧に捌かれ、まるで芸術品のように美しく仕上げられます。米川さんは地元の魚の魅力を、その新鮮さを最大限に活かし、素材の味わいを引き出す江戸前寿司の技法で引き出しています。
この日、提供された握りには、かのやカンパチ、ホンガツオ、タカサゴ(グルクン)、ウルメイワシ、カスミアジ、ニベ、バショウカジキ、ソデイカ、ヘダイ、ウスバハギの肝乗せ、カゴカキダイ、ナミクダヒゲエビ、ヒメアマエビそして釜揚げシラスが並びました。地魚は、季節やその時期の漁獲によって変わるため、訪れるたびに旬の味覚や新しい発見を楽しめるのが榮樂寿司の魅力です。
例えば、秋の訪れを告げる秋太郎(バショウカジキ)、南国の熱帯魚のような見た目のカゴカキダイなど、珍しい魚が登場することも。

「タカサゴは5~6年前から佐多岬あたりでよく釣れるようになったのですが、鹿児島でたくさん獲れると沖縄に送られるんですよ。沖縄のほうが消費量が多いからこっちより高く売れるのです。だからこちらではあまり見ませんが、新鮮なら刺身でもおいしい魚。うちには獲れたてが届くので刺身や寿司でおいしく食べられるのです」と米川さんは言います。
こうした、時期や場所、そして海の環境変化によって漁獲が変わる天然魚ならではの美味しさを楽しめることが、榮樂寿司が長年にわたって地元で愛され続けている理由の一つです。

かのやカンパチの箱寿司
伝統と革新の融合

鹿屋市の特産品「かのやカンパチ」。このカンパチを使った「かのや名産かんぱち箱寿司」は、伝統的な押し寿司の技法を活かし日持ちのする商品として、県や市の特産品コンクールにて「最優秀賞」や「優秀賞」を受賞するなど、特別な日の贈り物など好評をいただいています。
カンパチの特徴は、程よい脂と弾力のある身で、噛むごとに口いっぱいに広がる旨味が楽しめます。箱寿司は、鹿児島県産の「ひのひかり」と北海道産の「棹前昆布」を使い、丁寧に仕上げられた一品です。新鮮なカンパチを、特製の黒酢をブレンドした酢で締めることで、魚本来の旨味を最大限に引き出しています。
さらに、黒砂糖でコクと照りを加えた甘酢煮昆布をのせることで、風味豊かで奥深い味わいの寿司に仕上がっています。カンパチ、シャリ、甘酢煮昆布の絶妙な組み合わせは、絶妙な旨味の一品です。

「かのやカンパチは以前は県外への出荷がメインで、地元の飲食店であまり見かけることがありませんでした。しかし、今では漁協が運営する食堂を始め、地元でも少しずつ提供されるようになりました。地元の人々が味わう新鮮で美味しいカンパチを、観光客の皆さんにもぜひ楽しんでいただきたいと考えています。」
お土産として観光客にも人気のカンパチの箱寿司を開発した米川さんは、魚の地産地消にこだわりがあります。
米川さんの、地魚に対する熱い思いを聞かせていただきました。

鹿児島の
うんまか深海魚

鹿児島県は、黒潮が通る太平洋、東シナ海、鹿児島湾といった豊かな海に三方を囲まれています。特に水深200m以上に達する鹿児島湾の深海には、多種多様な魚が生息しています。しかし、これまで深海魚は一般に広く知られておらず、食卓に上がることは少ないものでした。

そんな中、榮樂寿司では、鹿児島大学水産学部が産学官連携で鹿児島深海魚研究会を立ち上げ、ブランド化することに成功した「鹿児島のうんまか深海魚」を取り入れ、地元の食文化に新たな彩りを加えています。

「うんまか」とは?
—深海魚の魅力

鹿児島の方言で「うんまか」とは「美味しい」という意味です。深海魚(200m以深に生息している魚のこと)は、他の魚では味わえない濃厚な風味が楽しめます。脂が乗り、食感が豊かな深海魚は、まさに「うんまか」の名にふさわしい食材です。

榮樂寿司では、通常の寿司ネタとしてよく知られている魚に加え、鹿児島湾でしか味わえない深海魚を積極的に取り入れています。特に、漁獲によって変わる深海魚メニューは、出会ったことのない味わいを楽しめるのが魅力です。

贅沢な一品!
幻のナミクダヒゲエビ

榮樂寿司でカンパチに続いて出会ったのが「ナミクダヒゲエビ(赤海老)」です。
「初めは普通のエビだと思っていたのですが、偶然訪れた鹿児島大学水産学部の大富潤教授から、「幻のエビ」としてその希少さと美味しさを教わり、驚かされました。」
米川さんは錦江湾で獲れるエビについて話してくれました。
「ナミクダヒゲエビは水深130m以上に生息し、とんとこ漁といわれる伝統漁法で狙って獲るのは世界でも鹿児島湾のみで希少な存在です。
刺身はもちろん、天麩羅、塩焼き、握り寿司でも楽しめるナミクダヒゲエビは、その甘みとプリプリした食感が特徴です。この貴重なエビを、ぜひ一度食べてみてください。ただし、天候によって入荷が不安定な場合があるため、事前に確認することをおすすめします。
同じとんとこ漁で獲れるヒメアマエビは、誤った名称表示の「桜エビ」として売られることがありますが、実は非常に貴重なエビです。知名度が上がり、14~15年前に比べてその価格は10倍近くに跳ね上がりました。外国産のエビが多く流通する中、ぜひ地元で獲れた希少なエビを味わっていただきたいです。」

大学教授や地元漁師と
連携した地産地消の取り組み

榮樂寿司では、地元の漁師と密接に連携し、鹿児島周辺の深海で獲れる魚を仕入れています。
「漁師さんも知らない魚が水揚げされることもあり、その際にはすぐに写真を撮り、鹿児島大学の大富教授に送っています。大富教授は、すぐにその魚の名前を教えてくれます。大富教授とは20年以上の付き合いがあり、うんまか深海魚がテレビやラジオで取り上げられる際には一緒に出演することもあります。教授はこれまで1300種以上の魚を食べてきており、深海魚が美味しいこともよくご存じです。
例えば、「オオメハタ」や「キュウシュウヒゲ」、「マルヒウチダイ」などの深海魚は、エビ漁のトントコ漁(底びき網漁)に混ざって水揚げされます。エビが4割、その他の魚が5~6割を占めることが多く、これらの深海魚が売れるようになれば漁師さんたちのモチベーションが上がり、収入も増え、その結果後継者が育ちます。これまでは、持ち帰っても売れずに、獲ったその場で海に捨てられていた魚もありました。もったいないですよね。」
他の寿司店ではなかなか見かけないこれらの深海魚を、榮樂寿司では地元の海から届いた新鮮な魚として、握り寿司や刺身、天ぷらなどの揚げ物にして提供しています。

「まだまだ私たちが知らない、名前も見たこともない魚がいくつも水揚げされてきます。漁師たちは「おいしいよ」と教えてくれますが、売れないので自分たちで食べてその魚の美味しさに気付くのです。
深海魚の多くは、唐揚げなど揚げることで美味しく食べられます。」
鹿児島のうんまか深海魚は、その味わいと希少性が魅力の一つです。榮樂寿司では、そんな希少な深海魚を新鮮な状態で提供し、地元の海の恵みを存分に楽しめる料理を作り上げています。これにより、地元の人々だけでなく、県外からの観光客にも鹿児島ならではの特別な食体験を提供しています。

大隅半島の地魚の未来は
消費者の行動で
変わるかもしれない

榮樂寿司は、地元の魚を使い、地元の人々に愛される店を目指して、先代から2代にわたり長年営んできました。最も大切にしているのは、地産地消の精神です。地元の漁師や生産者と密接に連携し、新鮮な素材を仕入れることにこだわっています。
米川さんが行っている取り組みについて聞いてみました。
「カンパチを始め、地元で獲れた魚は他の地域に出荷され、地元で使われることが少ないという現状があります。漁師から「地元の飲食店に、もっと地魚の美味しい食べ方を知ってほしい」という声があり、観光協会や飲食店組合、鮮魚店、仲買人も交えて勉強会を開き、鹿屋市や大隅半島の様々な店で地元の魚が食べられるような機会を作りたいと考えています。未利用魚と呼ばれていた魚を見せると、「これ食べられるの?」と聞かれることもありますが、美味しく食べられます!

例えば、高山漁港や内之浦漁港の定置網で漁獲されるギンカガミは、かつては未利用魚とされていました。食べるところが少ない魚でも、工夫して寿司にすると美味しいです。焼いても煮ても美味しい魚で、今ではおすすめのネタの一つです。大隅半島は海が近く、すぐに新鮮な魚が手に入るため、地魚はまさに宝の山です。

私は鹿屋市の食育サポーターとして、公民館や保育園で地域の郷土料理を伝承する活動も行っています。子どもたちに魚の原形を見せて、それを調理して食べる体験や、お寿司作り体験は特に人気です。

また、スーパーで魚を買う時には、ぜひ鹿児島産と書かれた地魚を選んでほしいと参加者に伝えています。お財布事情もあるので、3回に1回程度でも構いません。それでも漁師さんたちの収入につながり、鹿児島の海を守ることになります。
漁師さんの後継者が育成され、漁業が続かないと、飲食店やスーパーに良い魚が入らなくなってしまいます。そうなれば、他県や外国からの仕入れに頼らざるを得なくなります。地元で獲れた新鮮な魚を食べることは、消費者ができるSDGsの実践とも言えるでしょう。近場で獲れた魚は、運ぶ距離も短く、飛行機や船で海外から運ばれる魚に比べ、二酸化炭素の排出量も少なく、環境にも優しい選択です。」

大隅地魚のお寿司と
幻のエビを食べに行こう

榮樂寿司は、鹿児島県鹿屋市にある地元で愛される寿司店で、地元の新鮮な魚介類を使った握り寿司や箱寿司、希少な深海魚を提供しています。店主の米川さんは地産地消の精神と「一魚一会」の想いを大切にし、地元の漁師や大学教授と連携して、地元でしか味わえない魚の魅力を伝えています。

一魚一会

旬地魚の握り、かのやカンパチの箱寿司、そして幻のナミクダヒゲエビなど、ここでしか味わえない贅沢なメニューが揃っています。榮樂寿司の地産地消の取り組みは、地元漁師との協力によって成り立っており、希少な魚を無駄にせず活かすことに重きを置いています。希少魚も工夫して美味しく提供し、地域の食文化を広める活動にも積極的です。
地元の魚を使うことで、漁師の収入を増やし、地域の漁業と食文化の未来を守りながら、観光客にも特別な食体験を提供しています。
鹿屋市を訪れた際には、ぜひ榮樂寿司に足を運び、地元の恵みを存分に味わってください。

基本情報

施設名
榮楽寿司
住所
〒893-0005 鹿屋市共栄町16−7
Googleマップで見る
TEL
0994-42-4402
営業時間
昼/ 11:30-14:00 夜/ 18:00-22:00
定休日
月曜日
ウェブサイト
https://www.eiraku-net.com/
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